前回のブログでは、土中環境整備として、集水桝を中心とした氣水脈の整備の様子をご紹介しました。
今回は、建物に沿った水脈の施工をご紹介します。
物件基本データ | |
住居形態 | 戸建て |
住まいのエリア | 千葉県南部 |
構造 | 木造軸組(在来工法) |
築年数 | 40年 |
リフォーム範囲 (坪数等) | 敷地60坪(建物25坪・2階建て) |
リフォーム内容 | 土中環境整備による、水や空気の流れの改善 |
◆土中環境整備の施工のステップ◆ | |
STEP1 | 不要物撤去 |
STEP2 | 植栽・樹木整備 |
STEP3 | 土中環境整備①(雨どいの排水の再整備(集水桝の作成と氣水脈の施工)) |
STEP4 | 土中環境整備②(建物に沿った水脈の施工)←今回ご紹介 |
STEP5 | 土中環境整備③(集水桝からの排水用の水脈の施工) |
建物に沿った水脈を整備する重要性
伝統建築の建物の周囲は、「雨落ち」と言って屋根を伝った雨水が軒下に落ちて水はねしないよう、且つ土中に浸透するような仕組みが造られていました。現代建築では雨水を雨樋によって集めるため、雨落ちという施工がなくなりました。しかし、軒下に吹き込んだ雨によって水はねは起こるため、犬走りと言って土間コンクリートで固めたり、雑草が生えるのを防ぐため防草シートを張って砂利を敷いたりして、土の中の水と空気が動かないような造りになりました。結果、雨水が浸透せず水捌けの悪い庭となります。また、建物の周りは人が歩き土圧がかかるため、土の目詰まりが起こりやすい場所です。そのため、雨水が土中に浸透し空気が通るような出入り口「氣水脈」を造る必要があります。
氣水脈を正しく整えてあげると、掘った溝から水や空気が出入りすることで、土の中に酸素が供給されて土が呼吸できるようになります。そうすると菌(好気性)が活発になり、草木の根が張りやすくなるため土が柔らかくなり(団粒化)、土地の環境改善が期待できます。土地の環境とは、土の中の状態が地上に現れるものであり、土の中の水と空気が滞って腐敗すれば、自ずと地上の環境も悪化するのです。この施工を丁寧に実施することは、敷地内の環境改善に大きな影響があると言えます。
建物の周囲に沿った水脈の作成
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まず、建物に沿って、水の流れとなる溝を掘っていきます。 |
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掘った溝には、炭やグリ石・伐採木を敷き詰めていきます。写真の場所は人が歩く通路になるため、草木枝葉よりも石や幹など分解されにくく構造が保たれる素材を使用しています。場所や状況によって使用する素材や資材を変えるのも技術のひとつです。 |
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家の敷地内に降った雨水をその土地で適切に浸透させることは、ゲリラ豪雨などの大雨の際に多くの水が河川に流れ込むのを防ぐ一助となるため、水害対策の一助として注目され始めています。 |
屋根からの雨どいの周囲の施工
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屋根から直接水が流れ込む雨どい(竪樋)の周辺については、少し工夫を行います。 |
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掘った縦穴にも、炭、グリ石、伐採木を敷き詰めていきます。 |
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石や伐採木の敷き詰めが終わりました。 |
建物に沿った水脈の全景
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今回作った水脈を上から撮影してみました。 土中環境を通して、水や空気の自然な流れが生まれ、家が土地や自然に”つながっていく”。 |
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今回作った水脈を上から撮影してみました。 土中環境を通して、水や空気の自然な流れが生まれ、家が土地や自然に”つながっていく”。そんな家の変化が、少しでも皆さんに伝われば幸いです。 |
次工程について
今回のSTEP4では、建物に沿った水脈の整備の様子をご紹介しました。
次工程は、土中環境整備の仕上げとなる、STEP3で作成した大きな集水桝から、敷地外への流れを作成します。
土中環境整備について、もっと知りたい、相談したいという方は、ぜひ山匠にご相談ください。