前回の施工実績では、土中環境整備による湿気対策について、施工実績をご紹介しました。
山匠では、家の快適性を左右する要素として「空気や水の循環」を大きなテーマとし、多くの新築建築やリフォーム工事に取り入れています。今回は、土の中の「水や空気の流れ」をもたらす土中環境整備に加え、家の中の空気の「自然循環を促す」通気浸透工法もご紹介したいと思います。通気浸透工法は、住宅の外壁や屋根において、湿気を効果的に排出し、内部結露を防ぐための建築工法です。
主に壁内の通気層を確保しつつ、湿気を適切に透過させる材料を使用することで、建物の耐久性や快適性を向上させることを目的としています。通気層による空気の自然循環がなされているので蒸れることがなく、快適な環境が実現できると共に、住宅の寿命・耐久性も高めることができます。
空気・水の循環をもたらす「つながる家」の施工例について、複数回に分けてご紹介しますので是非ご覧ください。
基礎下の工事全景 | |
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物件基本データ | |
住居形態 | 戸建て(新築・3階建て) |
住まいのエリア | 東京都品川区 |
構造 | 木造軸組(在来工法) |
敷地面積 | 25坪 |
延床面積 | 36坪 |
間取り | 二世帯住宅 1F(1DK)2・3F(4LDK) |
主要設備 | 24時間換気 高気密・高断熱 |
その他特徴 | 通気浸透工法 |
高さ制限をクリアする、基礎下水脈工事のひと工夫
今回ご紹介する新築のお住まいは、3階建ての二世帯住宅です。
こちらのエリアには高さ制限がありますが、3階建ての階高を取る為には、基礎の位置を低くする必要があります。
しかしながら、階高をとる為に基礎を道路面より低くしてしまうと、基礎の中に湿気がこもりやすくなったり、強制的に排水をさせるためにポンプを置いたりする必要が出てきてしまいます。他にも、薬剤による地盤改良という手法も考えられますが、土地や環境にダメージを与える結果になりかねません。
今回は、この問題を解決する為「鋼管杭」を使い、基礎の強度も担保しながら階高をコントロールしつつ、基礎下に 「水脈(土中環境整備)」を作ることのできる工法を採用しました。
水脈工事(土中環境整備)と通気浸透工法による水・空気の循環は、新築だからこそ可能な「つながる家」実現の選択肢のひとつです。
古典土木技術と現代建築を組み合わせた自然環境にやさしく持続可能な住まいの工法を、ぜひご覧ください。
新築工事の流れ
今回の物件のテーマは空気・水の循環をもたらす「つながる家」です。
湿気対策の基礎となる土中環境整備に加え、建物の建築工程でも通気浸透工法による通気性向上のための様々な工夫をご紹介します。
施工は以下の流れで実施します。(物件により、必要な施工内容や順序は変わることがあります)
今回のブログでご紹介するのは、STEP1の土中環境整備 + 基礎工事です。
STEP1:土中環境整備 + 基礎工事
STEP2:大工工事
STEP3:断熱工事
STEP4:造作工事 → 完成
<整地と旧井戸穴への接続>
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まずは整地です。 同時に地質調査を行い、地盤の強度を調べます。 調査の結果、地盤の強度補正が必要な場合は、薬液注入、鋼管杭(こうかんぐい)、木杭など、どのような手法で補正するかを検討します。今回は、重機搬入が難しい場所のため、鋼管杭での強度補正を実施します。 |
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写真の穴は、元々あった旧井戸の跡穴です。 井戸穴を点穴(縦方向に水を浸透させる穴)機能として利用するために、傾斜をつけて整地していきます。このように水が流れ込む「集水桝」を作成することで、大雨時も穏やかに水を排水・浸透させることができます。また、集水枡の許容水量を超えてしまった場合でも、敷地外にスムーズに排出できるよう、井戸穴から排水溝に通気排水槽を接続しています。 |
<鋼管杭による基礎の安定>
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次に、地面に鋼管杭(こうかんぐい)を打ち込んでいきます。 ※写真では、すでに鋼管杭の周りを根伐床(ねぎりどこ)した状態です。 鋼管杭は、地盤が弱い場所で基礎をしっかりと支えるために使用される杭です。地盤の強い層(支持層)まで杭を到達させることで、しっかりと建物を支える基礎を構築することができ、不同沈下(ふどうちんか:建物の重みによって地盤が不均一に沈み、建物が傾いてしまう現象)を防ぐことが可能です。 |
<根伐床の作成と水脈の整備>
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さらに、根伐床(ねぎりどこ)と呼ばれる起伏を作り、間の溝の部分に、岩石を適度な大きさに割った、「グリ石」と呼ばれる小石を詰めていきます。 鋼管杭に加え、根伐床をきっちりと整備することで、杭と基礎の間の地盤が安定し、建物の荷重を均等に分散させることができます。 また、グリ石に隙間があることで、水・空気は滞留せず、自然な流れが生まれます。湿気やカビ、建物の傷みも発生しずらくなり、長く健やかな環境を保つことができます。 大雨の際にも水流がこの隙間を通り、スムーズに集水枡に排水することが可能となります。 |
<基礎工事の下地が完成>
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防湿シートを被せ(写真左)、全体に鉄筋を張り巡らせます。
防湿シートは、地面から上がってくる湿気が基礎のコンクリートに影響しないよう、水脈と根伐床の上全体に敷きます。こうすることで、基礎の上に建つ建物本体にも湿気が上がりにくくなります。 鉄筋は、基礎に使用するコンクリートの強度を高め、ひび割れや損壊を防いでくれます。 |
次工程について
今回はSTEP1の「土中環境整備 + 基礎工事」の様子をご紹介しました。
次工程は、建物本体の大工工事をご紹介したいと思います。
湿気対策をしても改善しない、家の傷みが激しい、空気の淀みや嫌な臭いを感じる等のお悩みをお持ちの方は、ぜひ山匠までお気軽にご相談ください。